アスベスト調査義務化の対象・時期・罰則|2026年新制度も解説

アスベスト(石綿)の事前調査は、規模を問わず原則すべての解体・改修工事で義務です。
2021年4月の法改正で対象が全ての石綿含有建材に広がり、規制はこの5年で段階的に強くなりました。
2026年1月からは、国が定めた特定の工作物(煙突・配管など建物以外のもの)の調査も資格者に限られました。
「いつから何が義務なのか」を、この記事で順番に整理していきましょう。
アスベスト調査義務化の年表|2021年から2026年まで4段階
アスベスト調査の義務化は、2021年から2026年にかけて4段階で強化されてきました。
節目は次の4つです。
| 時期 | 変わったこと |
|---|---|
| 2021年4月 | 規制対象が全ての石綿含有建材に拡大/調査方法(書面→目視→分析)が法律で明確化 |
| 2022年4月 | 一定規模以上の工事で、調査結果の報告が義務化 |
| 2023年10月 | 建築物の調査は「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者だけに |
| 2026年1月 | 特定の工作物の調査も資格者が行うことが義務化/それ以外の工作物は塗料など石綿のおそれがある材料の除去等に限る |

資格者に関する義務は、いずれも「その日以降に着工する工事」が対象です。
判断の基準は、契約日ではなく着工日。
着工日がいつかで、必要な資格や手続きが変わります。
対象となる工事|規模を問わず原則すべて

うちは小さな工事なんですが、それでも調査は必要ですか?
はい、工事の規模は問いません。原則、すべての解体・改修工事が事前調査の対象です。


対象は、建築物・工作物の解体・改造・補修の工事すべてです。
金額や床面積による下限はなく、小さな修繕でも調査は原則必要です。
厚生労働省の通達でも、一戸建て住宅の解体や水回りの改修まで想定して制度が作られたと示されています。
「ビルや工場だけの話」ではないのです。
なお、よく聞く「80m2以上」「100万円以上」は、行政への報告が必要になる基準です。
建築物は、解体が「解体部分の床面積の合計」、改修・補修が「請負金額(税込・調査費含まず)」で判定/工作物は解体・改修とも請負金額で判定。
契約を分けても合算で判定されますし、調査そのものに規模の下限は設けられていません。
「うちは小さい工事だから対象外」という思い込みは、当社にもよくお問い合わせをいただきます。
調査が不要とされる例外|4つの作業と築年数の扱い
例外的に、事前調査そのものが不要とされる作業もあります。
ただし範囲はかなり限定的で、中身は国の通達で細かく決まっているものです。
ここでは次の2つに分けて説明します。
- 調査そのものが不要な4つの作業
- 2006年9月以降に建てた建物の扱い
まずは4つの作業からです。
調査そのものが不要な4つの作業
厚生労働省の通達(基発0804第8号)は、調査不要の作業を4つに限定しています。
石綿の粉じんが出ないことが明らかな作業だけです。
- 石綿を含まない材料だけを周囲を傷つけずに外す作業
- 釘の打ち抜きなど、ごく軽微な損傷で済む作業
- 既存の塗装に重ね塗りするだけの作業
- 国の確認で石綿が使われていないと分かっている特定の工作物・船舶
この4つに当てはまる場合は、調査も報告も不要です。
ただし該当するかの判断は厳格で、電動工具で壁に穴を開ける作業は「軽微」に当たりません。
通達は「周囲の材料を損傷させるおそれのない作業」に限っていますので、迷ったら調査する側に倒してください。
2006年9月以降に建てた建物の扱い
アスベストは2006年9月1日に、0.1%を超える製造・使用が禁止されました。
それより後に着工した建物は、調査の手間が軽くなります。
着工日を設計図書などの書面で確認できれば、現地の目視や分析を省略できます。
ただし「調査不要」になるわけではありません。
着工日を書面で確かめる行為そのものが、法律上の事前調査です。
報告の対象工事なら、「石綿なし」という結果の報告も必要です。
また、非鉄金属・鉄鋼・化学工業の一部設備は、基準となる日付が2007〜2012年と異なります。
制度の全体像は環境省のパンフレット(PDF)にまとまっています。
調査の流れと資格・報告のしかた
調査は「書面→目視→分析」の3ステップで進み、一定規模以上の工事では結果を工事前に行政へ報告します。
依頼する側も流れを知っておくと、見積もりや日程の話がスムーズです。
押さえるのは次の3点です。
- 調査は3ステップで進む
- 調査できるのは4種類の資格者
- 結果は工事前に国へ報告
順に見ていきます。
調査は3ステップで進む

法律上の調査は「書面調査 → 現地での目視調査 → 分析調査」の順です。
設計図書で当たりを付け、現地で確かめます。
分析に回すのは、判別できない建材だけ。
すべての建材を分析するわけではないため、日数も費用も現場ごとに変わります。
書面と目視で判断できれば、分析なしで調査が終わることもあります。
調査できるのは資格を持つ人だけ(ただし例外がある)
建築物の調査は、2023年10月1日以降に着工する工事から有資格者だけが行えます。
ただし、着工日を書面で確かめて終わる場合など、一部の方法には資格の要件がかかりません。
「書類を見るだけだから誰でもいい」ということではなく、どの方法で調べたかで変わる、という整理です。
建築物の調査を行えるのは、次の資格を持つ人です。
- 特定建築物石綿含有建材調査者
- 一般建築物石綿含有建材調査者
- 一戸建て等石綿含有建材調査者(戸建て等の内部専用)
- 工作物石綿事前調査者/2026年1月からの工作物用で、建築物の調査には使えません
分析調査も、国の告示で定められた分析者に依頼する決まりです。
依頼先を選ぶときは、資格者が調査を行うかの確認が第一歩です。
結果は工事前に国へ報告
一定規模以上の工事では、元請業者(工事全体を請け負う会社)が調査結果を工事開始前に報告します。
報告先は労働基準監督署と都道府県等で、石綿事前調査結果報告システムから一括で行えます。
システムの利用には「GビズID」というアカウントが必要です。
石綿が見つからなかった場合でも、報告は省略できません。
報告するのは元請業者で、発注者が操作する必要はありません。
罰則|調査や報告を怠るとどうなるか
調査や報告を怠ると、拘禁刑や罰金の対象になります。
主な罰則は次のとおりです。
| 違反の内容 | 根拠となる法律 | 罰則 |
|---|---|---|
| 事前調査を行わない | 石綿障害予防規則(罰則は労働安全衛生法) | 6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 調査結果を報告しない(労働基準監督署へ) | 石綿障害予防規則(罰則は労働安全衛生法) | 50万円以下の罰金 |
| 調査結果を報告しない(都道府県等へ) | 大気汚染防止法 | 30万円以下の罰金 |
| 隔離をせずに吹付け石綿を除去する | 大気汚染防止法(直接罰) | 3月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 |
「報告しない」の行が2つあるのは、別々の法律がそれぞれ報告を求めているためです。
※2025年6月から、刑罰の「懲役」は「拘禁刑」に一本化されています。
2021年の法改正では、行政の命令を待たずに罰を科せる「直接罰」も新設されました。
規制は年々厳しくなる一方です。
罰則よりも重いのは、違反の発覚で工事全体が止まるリスクです。
【2026年1月〜】工作物のアスベスト調査も資格者が義務に
いちばん新しい変更が、2026年1月1日に始まった工作物の資格者調査です。
始まったばかりの制度ですので、発注者側も知っておきたい変化です。
ポイントは次の2つです。
- 対象は「特定工作物」など
- 資格者の不足で日程が延びやすい
それぞれ確認しましょう。
対象は「特定工作物」など

資格者調査の対象は、煙突・ボイラー・配管設備・貯蔵設備などの「特定工作物」17種類です。
それ以外の工作物は、塗料など石綿のおそれがある材料の除去等に限られます。
2026年1月1日以降に着工する工事から適用されます。
工場設備の改修や煙突の解体を予定しているなら、資格者の確保が必須です。
対象の一覧は厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイトで確認できます。
資格者の不足で日程が延びやすい
資格者調査の対象が広がった分、調査の日程は早めに押さえておくほうが確実です。
当社は建設業の人材紹介も手がけているため、その人手不足を採用の現場でも肌で感じます。
工事の直前に依頼すると、資格者の手配待ちで着工が遅れるおそれがあります。
計画段階で調査まで済ませておくのが、工程を守る近道です。
発注者の役割|費用負担から届出まで
調査を行うのは元請業者ですが、発注者にも法律上の役割が定められています。
整理すると、下の表のようになります。
| すべきこと | 根拠 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 調査費用を適正に負担する | 大気汚染防止法18条の15 | 義務(協力) |
| 石綿の使用状況などを元請に伝える | 石綿障害予防規則8条1項 | 努力義務 |
| 設計図書の提供や写真撮影に協力する | 石綿障害予防規則8条2項 | 配慮義務 |
| 工期や工事費で無理な条件を付けない | 大気汚染防止法18条の16など | 配慮義務 |
| 吹付け石綿等の除去工事の届出 | 大気汚染防止法18条の17 | 発注者が届出 |

表の「努力義務」「配慮義務」に罰則はありませんが、法律が発注者に求める協力の姿勢です。
見積書に「事前調査費」の項目があるのは、法律に沿った正しい形です。
吹付け石綿などの除去・封じ込め工事では、作業開始14日前までに発注者名義で届出を行います。
元請任せにせず、調査結果の書面説明を受けて保管しておくことも大切です。
当社としても、発注者の方が制度をご存じかどうかで、工事の進み方は大きく変わると感じています。
アスベスト調査の義務化に関するよくある質問
最後に、義務化についてよくある疑問にお答えします。
調査の費用はいくらかかりますか?
小規模な建物の調査一式で5万〜15万円程度、分析は1検体1〜3万円程度が目安です。
相場と節約の方法を知ってから見積もりを取ると、比較がしやすくなります。
詳しい内訳や補助金は、以下の記事で解説しています。
【関連記事】アスベスト調査費用の相場と内訳|補助金と3つの節約術も解説
自分で行うDIY工事でも調査は必要ですか?
「個人だから要らない」という線はありません。
石綿障害予防規則は「事業者」に義務をかける法律ですので、個人がご自宅で行う工事は対象の外です。
ただし大気汚染防止法は、請負契約によらずご自身で施工する方(自主施工者)にも、調査と記録、現場での掲示を義務づけています(第18条の15第4項・第5項)。
要否が分かれるのは「個人か事業者か」ではなく「どの作業か」です。
電動工具で壁に穴を開ける作業は、上でご説明した4つの例外に含まれません。
ただし、業者に頼む工事や壁・天井を壊すリフォームは対象です。
「個人だから全部対象外」ではない点に注意してください。
調査で石綿が見つかったら工事はどうなりますか?
建材の種類に応じた飛散防止対策を取ったうえで、除去や封じ込め(固めて飛散を防ぐ工事)を進めます。
「アスベストを含むもの」とみなして分析を省き、対策工事に進む方法もあります。
結果が出てから慌てないためにも、調査は早めが得策です。
工事の途中でアスベストが疑われる建材が見つかったらどうなりますか?
作業を進める前に、改めて事前調査を行う決まりです。
報告対象の規模の工事では、その結果の再報告も必要になります。
見た目では判断できないため、資格者への確認が安全です。
まとめ:アスベスト調査義務化は全工事が対象|早めの準備で慌てない
最後に、要点を振り返ります。
- 調査は規模を問わず原則すべての工事で義務(2021年4月に全建材へ拡大)
- 報告・資格者調査へと4段階で強化
- 2026年1月からは特定の工作物も資格者調査/それ以外は塗料などの除去等に限る
- 罰則は拘禁刑や罰金/違反が見つかれば工事が止まることもある
- 発注者の役割は費用負担・情報提供・届出
最初の一手は、工事を頼む予定の会社への「事前調査はどうなっていますか」という確認です。
依頼先がまだ決まっていない場合は、調査から対応できる会社を探すところからです。
義務の全体像さえつかめば、あとは資格のある調査先を早めに押さえるだけです。
着工日から逆算して、計画段階で調査を終わらせておくのが確実です。
当社は、資格者によるアスベスト調査を全国対応で行っています。
調査のあとに続く除去工事・解体工事も同じ会社で承るので、報告のあとの段取りまで一度の相談で決められます。
【関連ページ】建設事業 – 株式会社TOP OF
「うちの工事は対象なのか」という段階でも、お気軽にお声がけください。
相談だけでも構いませんし、見積もりは無料です。
全国対応・相談無料
「うちの工事は対象?」もお気軽に
調査が必要か分からない段階でも大丈夫です。
出典:
環境省「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策パンフレット」(PDF)
環境省「石綿飛散防止対策マニュアル 付録・事前調査の方法」(PDF)
厚生労働省 通達「基発0804第8号」
厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」
厚生労働省 宮城労働局「石綿事前調査の義務化リーフレット」(PDF)
制度の内容は2026年7月時点の情報です。
個別の工事の扱いは、行政の窓口や調査会社にご確認ください。



